インタビュー フォトグラファー 舞山秀一さん

profile
舞山 秀一

1962年福岡県生まれ。
84年 (株)スタジオエビス入社、半沢克夫氏に師事した後、86年独立。
広告写真、ファッション雑誌、CDジャケット、写真集等で人物撮影を
中心に活躍。個展開催、写真集出版多数。

出会ってみたい新人モデル像は?

「僕はその子がその子らしくいる限り、いつも出会いを楽しませてもらっているし、驚きを感じさせてもらっています。だから自分らしくいてくれることが一番。有名なモデルの誰かを目標にして、その子のようにされても全然つまらないのでそれはやめてほしいですね。ただ、あまりにも自分好きで、鏡を見て自分のキメはココ!って決めてくる子は僕は苦手です。

せっかく撮るのだから、僕は普段見ている顔じゃない顔を撮ってあげたいと思うんです。でも、それが不安な子っている。

僕たちの仕事は、「私を撮られる」「あなたを撮る」じゃなくて、一緒に作ることが目標ですからね。
とくに個人的に自分の作品を作るだけだったら自分の好みだけでいいけれど、仕事となった場合、結局、(広告や雑誌という)媒体があって、僕は仕事として受けているし、モデルも仕事として受けている。クライアントの要望に応えながら、いかに最高のものを一緒に作るかが大切なのですから」

伸びるモデルとは?

伸びるモデルとは?

 
「モデルにとって容姿は外せない条件ですが、知性も写真に表われます。だからモデルのように見られる立場の人は、気持ちのレベルを高くしておくことも大切です。

たとえば本を読んでいろいろなことを知識として自分に備えていることも重要だと思う。
ただし、あからさまに『私は本読んでます!』というふうに頑張っている姿が見えすぎる子はダメですよ。

ギターリストが毎晩血まみれになりながらギターの練習をしている姿を見せるのはカッコ悪いですよね。そういう姿はおくびにも出さずにライブですごいテクニックを見せるのがカッコイイ。それと同じ。

一流の人たちは陰の努力は見せずにみんな日々積み上げたものを形にしている。

何もしないでダラダラ生きているなと思われてはダメ。日々いろいろなものを取り入れることで内面に奥行きが感じられる子がモデルとして伸びていくんだと思います。
実際売れているモデルはみんな止まっていない。
どんどん進化していますよ」

モデルとして大切なものは?

「クリエイティブな仕事というのは、知識が2割、経験値も2割、6割は勘だと思うんです。
なぜかというと、新しいものを作ろうとするときに、経験値や知識だけを持ってこられてもつまらないからです。

“この間着ていたあの服であのポーズがよかったから”と言ってやらせたら、簡単だし、失敗はしないかもしれない。けど、できあがった作品は前見たものでしかない。知識と経験だけでは、新しいものは何も生まれてきません。

僕たちの仕事で大切なのは、新しいものを生み出そうという発想で、知識や経験は補助でしかないんです。
あと、どんな撮影も器用に楽しめることが大切です。

あるときはとうもろこしを持たされたり、あるときはすごいコレクションの服を着せてもらったり、モデルの仕事って実にいろいろ。その中で、「この内容だから楽しめない」ではなく、いつもハッピーな気持ちで表現できないと。
スタッフとの出会いも含め、その現場現場を楽しめることが大切ですよ」

残るモデルと残らないモデルの違いは?

残るモデルと残らないモデルの違いは?

「カメラマンの世界も同じなんですが、残っている人と残ってない人の違いは上手いか下手かではなくて、その仕事に”執着しているかどうか”だと思います。

その仕事をやっていて楽しかったり喜びの量が多いから続けるし、残っていくんだと思う。とくにモデルの世界は頑張ってもどうしようもないことがあります。

たとえば今回の仕事は丸顔を求めているという場合、どんなにキレイでスタイルが良くて万全を期した状態でオーディションに臨んでも、丸顔でない限りその子にチャンスはない。これはもう本人の力ではどうしようもない。でもそれが当たり前の世界ですから、オーディションに何本も行く中で、そのギャップをどう自分の中で埋め合わせていけるか。毎回ダメ出しをされているような気分になることもあるだろうし、ハートが弱いと続けられない。」

やめるのは簡単だけど、続けるのは大変です。大変なことをやるには原動力が必要で、それが執着心なんだと思います」

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舞山 秀一

1962年福岡県生まれ。
84年 (株)スタジオエビス入社、半沢克夫氏に師事した後、86年独立。
広告写真、ファッション雑誌、CDジャケット、写真集等で人物撮影を
中心に活躍。個展開催、写真集出版多数。