KEIKO : 第4話 両手に幸せを握り締めたい

自分の望むことと、事務所が望むことのギャップ。これで悩む人は多いと思う。
事務所の売り出し方針についていけない者は去るしかないのか...。
 次の日、社長に食事に誘われた。代官山にある、クラシックなイタリアン。お屋敷を改造したらしく、落ち着いた雰囲気だ。

「それで、KEIKOは、どうしたいんだ? いつも無口だから、今日はともかく、思うことを全部言ってごらん」

 クビを覚悟で、ボツボツと話し始めた。


「私......、小さい頃から、この身長が悩みの種でした。でも、今ではコンプレックスが反対に武器になることがわかったんです。最近は仕事の幅が広がって、やり甲斐もあったし......。でも、海外に行くと、私、生まれたてのバンビみたいになっちゃう。ストレスでお腹も壊してしまいました」

「ハハハハ......」

 ウォン・リーの撮影の時にも、場所の位置が悪くてスタッフから注意されたけど、言っていることがわからない 早口の英語が聞き取れなくてオタオタしていると、怒鳴られた。それで、ますます萎縮してしまう。

「英語を勉強してみる気はない?」

「そりゃあ、出来たらいいなとは思いますけど、正直言って年齢的にも難しいんです」

 短大を卒業して上京してから8年とちょっと経っていた。来月、29歳になってしまう。2、3年経って英語が出来るようになって世界に出るなんて、気の遠くなるような話だ。

「私、この事務所には不要ですか?」

「そんなことないさ。KEIKOは自分の好きなようにやればいいんだよ。世界だけがゴールじゃない。いくらだって仕事はあるさ」

 社長の言葉に救われて、涙がポロポロ溢れ出た。