インタビュー モデル・メンズレッスンスペシャリスト 松井大典さん

profile
松井 大典

1994年、大阪でモデルをスタート。1996年に東京に進出して1年後、単身で渡伊。
凛とした静・しなやかな強さを武器に日本人モデルがファッションの本場で活躍出来る事を証明してきた。現在、HEADSに所属。
モデルとしての実績に基づいたスキル、モデルとしてのあり方を問う姿勢に、講師としても定評がある。

現役モデルとして活躍していらっしゃいますが、今のメンズモデル業界や流れについて教えてください。

メンズモデルの仕事にはファッションショー、撮影、CM、TV、等があり、ファッションショーもステージで行うもの、フロアーで行うもの、ブライダルショーがあります。撮影も雑誌、カタログ、広告があります。

モデル業界は景気に左右されます。不景気になれば各企業は宣伝広告費を削減しますから、モデルの仕事も規模が縮小します。
海外ブランドのショーやデザイナーの来日ショー等少なくなり、広告 CM 等もモデルを使わず商品のみになったりします。しかし、毎シーズン、東京 大阪コレクション、ブライダルショーは行われていますし、毎月発売の雑誌であれば毎月仕事があり、新商品が出れば広告・CM の仕事、カタログの仕事が発生する可能性もあります。TV はイレギュラーで入ってきます。ファッションショーは春夏・秋冬のシーズンがあり 3・4 月、9・10 月に仕事が入ってきます。

モデルのギャラは何百万、何十万、何万と仕事の内容によって違いますし、モデルのレベルによっても違います。
今のモデルの主流は、撮影が出来るモデルで特別な存在より、親しみやすい存在、でも普通の人達よりは違う存在感がある事です ( 流行があるので、こればかりとは言えませんが )。

海外でもお仕事をされていますが、日本と海外のメンズモデル業界・事情で違いはありますか?

海外でもお仕事をされていますが、日本と海外のメンズモデル業界・事情で違いはありますか?

別次元と考えていた方がよいと思います。

ファッションを発信している国と受けている国の違いは歴然としています。洋服文化ひとつとってもヨーロッパでは中世にオートクチュールで、日本は 1858 年に洋服化が始まっていきますが約 1000 年弱の差があるのと、島国である為に情報が入ってこない事もあり洋服のレベルが上がりにくく、センスの差も大きく違うと思います。

そして、体形の違いも大きな差のひとつだと思います。ヨーロッパでも日本でも洋服の始まりは一枚の布、布を体に巻くといったものから入っていったと思います、それが、体の厚みの違いで立体に進化するか、平面で進化するかで洋服と着物の違いになっていったと思います。

このような進化の違いや歴史がモデルを選ぶ基準をハイレベルにしているのだと思います。

更に、コレクションに出るとなれば、世界各国からモデルがオーディションを受ける為に集まってきます。ミラノコレクションを例にすると、約 500 人ぐらいが、1 ブランド 30 人ぐらい選ばれるモデルのオーディションを受けます。

その 30 人の中ですでにデザイナーからキープされているモデルが数人いるので、10 人ぐらいが選ばれる事になります ( シーズンによっては 30 人全てかわる事もあります )。

世界レベルで観られ、世界基準で集まってくるモデル達のなかで、自分の存在感を失わないでいられるか? その中で選ばれるモデルにならなければなりません。

海外で仕事がしたい場合は、その国のモデル事務所に所属しないといけません。

マネージャー・社長のオーディションを受けて認められないと所属出来ません。

事務所によって、事務所の中でもマネージャーによって認めるモデルのキャラは違いますが、世界レベルのモデルでないと認められない事はかわりません。

メンズモデルにとって大切なもの、必要なスキルはなんですか?

モデルになって何をしたいか?という目標が必要です。
ただ何となくモデルになった人は、何となくのモデルにしかなりません。こんな事がしたいと考えてモデルを目指す人は、その事が出来る事務所選びをして、その為に必要な努力すべき点をみつけステップアップしていけると思います。

目指すものによって必要なスキルは違い、ものの見方、考え方、価値観もまったく違います。

そしてなにより、生きざまが大切だと思います。

どんな環境で、どんな人達と、何を考えながら生きてきたか? で、今のあなたがいます。

男性は、女性のようにメイクして、アクセサリーをつけ豪華な衣装を着て華やかに変身する事は出来ません、シンプルなところで厳しく評価される事に耐えうるだけの自分を作らなければなりません。

その為に、今後どのような生き方をして行くか、環境の違いで人はどんどん変わっていきます。目指す目標の為に、どんな環境でどんな人達に出会い、何を学んで行くかでこれからのあなたが決まります。

必要なスキルとして、ファッションショーを中心に考えているなら、ウォーキングが出来なければいけませんし、ブライダルのショーにも出演したいならエスコートが出来なければいけません。

撮影を中心に考えているなら、どんなイメージで写真が仕上がるか、その意味を理解して撮影場所でそのイメージを実際のものとして表現しなければなりません。その為の所作が出来なければいけません。

CM 等は動きの素晴らしさが表現出来なければいけません。

そしてモデルとしての存在感が、あなただけの存在感が必要です。

松井さんは講師としても活動されていますが、メンズ向けのレッスンではどんな事を学ぶのですか?

松井さんは講師としても活動されていますが、メンズ向けのレッスンではどんな事を学ぶのですか?

 
モデルとして仕事をスタートさせレベルアップして行く為に、観かた、考え方、ウォーキング、ポーズ、所作などの基本的な事から、目標としているところまで何を努力していけばたどり着けるか等見きわめてレッスンをします。

仕事によって、一人の時もあれば数人の時も、男性だけの時もあれば女性と一緒の時も、内容によって男友達、女友達、カップル、夫婦といった関係性の中でどんな表現が出来るのか求められたり、ショーでも女性とペアーになったり、ブライダルならエスコートをしなければならない時イニシャルチブをとり自分のペアーが素敵に見えるシチュエーション作りやエスコートをしてあげなければなりません。そのような時に、どのように理解してどのように対応すればよいか等、学びます。

仕事場で、色々なモデル ( 先輩や外国人 ) に会う機会が少なくなっている今。観て感動したり、共感したり衝撃を受けたり、学んだりする事が出来なくなっているので、そのような環境を自分で探して行くしかないと思います。

事務所に求めるのも一つの方法です。
そして、レベルの高い環境で学んで下さい。

モデルを目指す人へのメッセージ、新人モデルへのアドバイスをお願いいたします。

「モデルになろうか?なれるのか?」と悩んでいるのなら、「モデルになったら何がしたいか?」考えてみて下さい。
その答えが、悩んでいる気持ちより少しでも上なら、モデルの世界に来て下さい。

考えた答えより、悩んでいる気持ちが上。
答えが見つからないけど、と思った人。
やらずに後悔するなら、やって後悔だと思います。

駄目だったらその経験を次にいかしていけばよいと思います。

そもそも、悩んでいる時点でやってみたいと思っているはず、興味がなければ悩む必要はないはずですから。
モデルになって成功するか、駄目かは誰にもわかりません。

自分自身の強い意志が色々な環境に、人に、仕事に導いてくれるのだと思います。

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松井 大典

1994年、大阪でモデルをスタート。1996年に東京に進出して1年後、単身で渡伊。
凛とした静・しなやかな強さを武器に日本人モデルがファッションの本場で活躍出来る事を証明してきた。現在、HEADSに所属。
モデルとしての実績に基づいたスキル、モデルとしてのあり方を問う姿勢に、講師としても定評がある。